わたしが大切にしていること

Interview .05 | ⁩河合 智子 先生 Pick Up
Woman Principal Investigator

Interview .05 | 25年前に海外で見た「当たり前の両立」が、
私の研究人生を支えています

栄養学のバックグラウンドを活かし、妊娠前後の環境が子どもの発育に及ぼす影響を研究する河合智子先生。周産期病態研究部で室長を務める河合先生に、海外での経験が与えた影響、育児と研究の両立、そして若手研究者へのメッセージをお聞きしました。

河合 智子 国立成育医療研究センター
周産期病態研究部 胎児発育研究室長

「今ここでできること」を積み重ね、キャリアを築いてきました

元々は大学で栄養学を専攻し、学位も栄養学博士なんです。最初から思い描いた通りにここまで来たというよりは、結婚や出産のタイミングに合わせて「この環境でできることをやろう」という柔軟な姿勢で研究を続けてきました。
 
今取り組んでいる周産期病態研究というのは、妊娠に伴う合併症の病態や妊娠中の環境が発育に及ぼす影響を解明する研究です。学生時代に学んだ栄養学やこれまでに研究してきた分子生理学という、自分のバックグラウンドを活かすことができる研究だと考えています。

「そんなに構えなくてもいい」アメリカで見た自然な両立スタイル

アメリカに留学していた時、今朝まで仕事をしていたラボのスタッフが、午後に出産しに産院へ行くということがありました。そういう経験から「出産は女性の一大イベントだけど、そんなに構えなくてもいいんだ」と驚きました。
 
当時の私の上司には4人お子さんがいらっしゃって、私の滞在中にも2回の出産がありましたが、彼女もギリギリまで働いていました。生まれてすぐは自宅で仕事をされていて、打ち合わせはお宅に呼ばれたり、ベビーカーで赤ちゃんを研究室に連れてきたりと、育児という環境に無理なく仕事を取り入れている風景がありました。できる手段で進めていくというスタイルが自由でいいなと感じました。
 
現在の職場で、私も子どもを研究室に連れてきたこともあります。職場の上司や同僚にワークライフバランスの理解があったおかげと考えています。一方で、もし自身の出産前にアメリカであの上司の姿を見ていなかったら、出産を機に研究職を諦めることを考えていたかもしれません。

研究の目的を明確に共有することで、チーム全体が順調に進みます

私の研究部は女性が多く、年齢も近いメンバーが中心です。お互い育児のことも理解し合えるので、働きやすい環境です。
 
チーム運営で意識しているのは、何かをお願いした時に、「なぜそれをしなきゃいけないのか」をわかりやすく共有することです。研究の目的が明確だと、ちょっと大変な仕事であっても引き受けてくださいますし、いつまでにやらなきゃいけない理由もはっきりします。仕事に手をつけてもらう前に認識してもらうことが、お互いに順調に進めていく上で大切だと思います。
 
コミュニケーションも大切にしています。今はチャットでやり取りすることが多いのですが、お互いに理解ができているか不安になった時は、直接その人の席まで行って確認したり、わからなければ相手が来てくれたりと、情報を関係者みんなで共有することを心がけています。逆に仲が良すぎて「なあなあ」にならないよう、期限やスケジュール管理はきっちりするようにしています。

先の先まで考えすぎず、チャンスが来た時にチャレンジすることが大切です

研究職を目指す若い方は、先まで考えてきっちりプランを立てることが、自分をプレッシャーで縛ることになり、うまくいかない時にジレンマを感じてしまうこともあると思います。研究職は「これを知りたい」という探究心さえあれば続けていくことができますし、チャンスがあった時に躊躇せずにチャレンジしていけば、やりがいを持ち続けることができる仕事だと思います。
 
今は若い研究者を育てようという雰囲気が以前よりも高まっていて、学振などの支援金やプロジェクトに応募する機会が昔より多いです。またライフイベントの期間を考慮した研究費助成の応募も増えています。女性だからこういう働き方という制約は昔よりだいぶ少なくなっているので、いろいろなことに挑戦してもらいたいですね。

河合 智子 国立成育医療研究センター
周産期病態研究部 胎児発育研究室長

徳島大学大学院で栄養学博士号を取得後、イェール大学医学部と米国NIHで細胞のストレス応答研究に従事。帰国後は徳島大学と国立健康栄養研究所を経て、国立成育医療研究センター研究所·周産期病態研究部で研究員として勤務。その後、2016年5月より同部胎児発育研究室の室長として、胎児期環境や妊娠糖代謝異常がエピゲノムに与える影響の研究に従事。DOHaD学会編集委員も務める。